いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

遥子

遥子はアパートの一室で近所の八百屋で買ったのらぼう菜を切った。人が燃えているから毎日鶏肉しか食べないと言う。もっともこの世界では毎日どこかで人が燃えている。牛を屠る時その筋は硬く脈動している。焼くと人間のような匂いがする。鳥はあっけない。近所の鳥屋でそれは絞めている。鳥の首がいくつもあさの鳥屋に重ねられステンレスのボールの中に入っている。首の筋まで綺麗に取られた頭が入っている。

のらぼう菜を買ったものを米と一緒に鍋に入れる。カボチャを三切。ウェイパーを少し入れて鶏肉も加えて火にかける。夜9時か。

遥子は会社の金でオートロックのアパートに住んでいる。JRは潰れろJALは潰れろ、そして彼女自身の会社の名前も呟かれた。彼女自身の勤め先もまとめて、彼女は粉砕されたいという希望を持ったのだ。そしてまたいちから自分と家族の生活を焼け跡から作り直したいと考えたのだ。彼女はのらぼうの種を持っているから、どこへでも行ってのらぼうを育てることができる。土地と建物を人民に再び開放しろ!開放しろ開放しろ、開放しろと彼女は3回唱えた。遥子は爆弾を持っているのだ。だけど遥子はその爆弾を使った後も自分だけはまだ生きて生活を再建できると言う希望を実現する法を思いつかなかった。それで毎年のらぼう菜の種は握っていた。自分でそれを育て、自分で育てたのを食べ終わると探して買ってきてのらぼう菜を食べ、そして噛みながらまた策を練る夜。