いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

シャーレ

滅菌シャーレを出して並べ番号を書き付け液体をスポイトで入れて培地を流し込んだ。

 

私は不慣れにつき、培地を端まで流し入れることをしないで中途半端な場所で培地は固まってしまった。先輩がそれを見て不適切であることを言ったが、私はそうなのだと思ったきりで、他にどうしていいかわからなかった。その時私はすごい熱量を持っているように見せかけながら、案外にどうでもいい気持ちで物事に取り組んでいるんだと感じた。この先輩はそういう感情を許してくれるだろうか。しかし率直な話、自分の感情を打ち明けるだけで顰蹙を買う可能性があるような環境は問題だと思う。培地の縁は蛍光灯の光で光っていた。先輩は培地を後から足した。私は先輩とお茶を飲んで何か話したいと思った。

 

蘭を育てると言えば、棚を作りその三段の棚を雛壇状に、全て埋め尽くすほどに蘭を買って花を咲かせなければ気が済まない人だったのだ私の祖母は。私はそういうスノッブなところが嫌いだった。蘭を愛でている祖母ごと下劣な家に思えた。寂しさや遣る瀬無さをきちんと自分のために消費できないで、そんな小さなところから生まれたさみしいもの同士の交流を何よりも自慢のタネにしているそういう老人が嫌いだった。その家族は食い合ってみんな死んでしまい、後にはその祖母だけが残った。昼まで布団で寝ているという。誰もが死んだ後で惰眠を貪っているのが憎らしい。何が言いたいかというと私はこの祖母がどうしても好きに慣れないということである。

 

なぜこんなことを思い出したかと言えば、培地が端まで入っていないという話を聞いている時に、ふと祖母から、球根の具合が悪いことを聞かされていた時の気持ちを思い出したからだった。私はすっかり他人事で、そのために何かを調べてやろうかという気持ちも起こさなかったのであった。

 

 棺桶を見ている祖母を見て私はまさに射殺してあげたいと思ったのであった。(読者減る)

 

それから・門 (文春文庫)

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こころ (新潮文庫)

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 住所変更届出す時に上司の承認印がいるという謎の設定なので上司に私の住所が回覧されることになり非常に不愉快だった。男性だし。