いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

疫病通信 東から西へ

金曜日だから、テンションが上がってしまう。疫病の中を通勤していると本当に疲れてしまう。自分が歩く毒物だと感じられてきて、家にしまっておいてあげたくなる。電車の中ではいかなる小さな咳にも敏感に振り向く。そんな毎日を送るうち、電車の中でスマホをいじっていると、この街の西側では、耕作が盛んになり始めたというニュースを見た。

どうやら人間が堆肥を作るために耕作地以外の広い土地を求めて、学校の敷地を侵食したりするので、最初公的機関によって取り締まられていたが、西の方からだんだん仕事がなくなってきて、それ以外に生きる路がないということになってきたらしい。取り締まる警察や市役所の人も住民の話を聞き、それ以外仕方ないという話になってきて、何も理屈が通らなくなってしまったため、土地の侵食は必ず土地を返還するという誓約書を交わすことを条件に許されるようになってきているとの話だった。

私は早速東側での仕事をやめ、西側に向かうことにした。東側では稼げるが、もはやそれで交換できる品物は十分に輸送されてこない。

今まで子供を作りたいなどと思ったことはなかったのだが、不思議に子供を作りたくなった。西側では子供を作ることが奨励されており、周囲から助けが得られるとのことだったので、私は西行きを決断した。

会社では私の決断はまだ珍しいもののようだった。私についてはカオスを恐れない。カオスに身を投じれば必ずそこには理由のある行動があり、報道が追いついていないだけだ。