いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

青色光

青空の奥から届いた夜だ

妹を寄せ集めた

米屋の前で玉手箱を開けるように

犬たちがさわいだ

緑の信号の色が

山本マンションの入り口に照らした

集められたカレンダーは事務所のダンボールに

壁にかけられた日めくりは23日に

光ってマンションは立派に

腰掛けた車止めの冷たさ

キリスト教徒でなくても今夜は祈りたい

どうか魂に救済があるなら

どうか私の偽物の涙をむぐしって

守る力を授けるように

階段に

欄干に

屋上に

滅びたものをどんどんなくした

立派な木を組んで家を建て

歩いたら他人のこともわからなくなった

旅先の銭湯の番台の

人の顔を忘れてしまうように

木の名前を知りたくないと

思いたくない

じきに散歩の時間が来て

二人で家を出るだろう

放射冷却に君を晒すことなく

布団をかけて

今日が終わる夜

詩を読んでくれていた人が

今はもういてくれない

それが孤独だけど

余白はまだ固くなった餅のように

ぼかんと胸に刺さっている