27歳の11月
木は紅葉して日差しはあたたかい
布団を干した手すりに凭れ
この土地は中野のはずれ
部屋の中には旦那がのたり
隣人が掻いてのけた草の
眼下の庭の隅によけられている
気まぐれに生えたキウイの葉には
放射線状の光がこぼれ
私はメガネを外す
この詩を書く
家の中に呼ばれて入ると
道路の向かいの足場がきらり
空き地が日差しを最高にする
ハローワークに行き
キャリア面談を受ける
日差しのことを
十年後の僕は
分岐とは思わない
この土地に百年前住んだ人は
この土地を分岐とは思わない
この結婚を分岐とは思わない
この疫病を分岐とは思わない
二度とこの世にめぐり来ることのない私と
この分岐
日差しによって温められたこの孤独
旦那が運動をする
外からフレンチトーストの匂いがしてくる
何を決断しても
この世界に分岐はない