いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

借りた

家を借りたのに

いつもここではない場所に行きたくなってしまう

違う気配に会いたくなってしまう

生きているのに

喫煙所を下からのぞきまわって

死んだ人を探してしまう

バスで行くところはないのに

バスに乗りたくなってしまう

死んでいくのに死にたくない

生きているのに死んでいたい

働きたいけど

本も読みたい

湯たんぽにお湯を入れるとき

うらめしげに見た緑色のバスの中は

光っていて

死んだお母さんにお茶を入れてあげるような

懐かしい朝が来た

私は大磯の浜を歩いていた

その時旦那は蕎麦屋のなかで待っていた

文具やと本屋が一つになった店から

男が出できて紙袋をよく見た