2020-11-02 冬の通勤 始まった冬 わたしたちは知らない人の顔を見て 電車に乗った 記憶の中に温かい蕎麦湯を抱えながら 雪国のみち 琵琶湖から見える凍りついた山 登れなかった立石寺なども抱えながら 都営大江戸線の大門を過ぎたとき 離れていながら 私たちはお互いを見ているだろうか 涙が出そうなとき 人に優しくなれただろうか 凍てつく北のことを思いながら 鹿に阻まれて電車が進まなかった 数年前の冬のように お互いのことを思いあっているか あの頃と同じ色の血を湛えているか