いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

冬の通勤

始まった冬

わたしたちは知らない人の顔を見て

電車に乗った

記憶の中に温かい蕎麦湯を抱えながら

雪国のみち

琵琶湖から見える凍りついた山

登れなかった立石寺なども抱えながら

都営大江戸線の大門を過ぎたとき

離れていながら

私たちはお互いを見ているだろうか

涙が出そうなとき

人に優しくなれただろうか

凍てつく北のことを思いながら

鹿に阻まれて電車が進まなかった

数年前の冬のように

お互いのことを思いあっているか

あの頃と同じ色の血を湛えているか