製造業に就職すると、意味のわからん用語がたくさんあって、しかも長く働いている人は18歳くらいからもうその世界で生きているので、とにかくその世界の用語を一般常識と思っている事が多い。だから新人だからと行って噛み砕いて教えてくれないし、調べていると怒られたりする。待たれよ、頼むから教えてくれ。しかしいちいち聞いていると怒っている人がさらに怒ったりする。解せない。そこで赤子がするように猿真似するようになるが、それが思わぬ事態に発展してしまうこともある。言葉を理解しないで使うと色々な被害を被るものである。
旦那のお母さんが子供の時に、家の外で他の人が話しているのを聞いて「〜〜するじゃん!(甲州弁でタメ口で「〜〜しようよ!」「〜〜だよ!」の意味)という言葉遣いを身につけて家に帰り、父親に向かってそれを言ったら「それは目下の人に向かって使う言葉遣いだバカモン!!!」みたいな感じで殴られたという話を聞いた事があるが、まさにそんな感じ。本人は何で怒られたかわからないし、周りは何でそんな事ができないのかがわからないのでとにかくバカにしてると思って切れる。そういうパターン。
それでは製造業で出会った様々な独特なワードを紹介する。
・ファックスして
「ファックスして」と言われて、「ファックスとか10年ぶりにその言葉聞いたわ」と思った。最初ファックスの機械とコピー機がどっちがどっちかわからずたまに複合機もあるので、ファックスが送れない機械でファックスを送ろうとしたり、短縮ダイアルのやり方がわからなくて違うところに送ったりとかして、しかもエラーになった時のサインがわからず、送れていなかったりして怒られた。ファックスってまだあるの!?が正直な感想。
・アクセス入力して クエリでやって
マイクロソフトのアクセスというソフトで作ったシステムに入力してという意味。クエリというのはなんかその賢い機能の一部。そもそも最新版じゃないとインターフェイス古すぎて見れねえよ。
・仕掛かり
作っている途中の製品という事。「仕掛かりある?」「仕掛かり数量ファックスで送付してください(仕掛かりどのくらいあるか教えて)」「そろそろ仕掛かりないと(納期)間に合わないよ」とか使う。
入社当時「仕掛かりって何やねん!」「引っかかってるの?」とか思っていた。簿記二級勉強しはじめやっとわかってきた。「仕掛かりって何ですか」と聞いても「しかかってるやつ」とかいう謎の返答をもらう事が多い。挫けんな。
・控えていただけますか
電話で言われる謎の言葉。製造業関係ないけど。「メモ取ってください」の意味らしいとやっとわかってきた。この言葉を言われた後にメモ取らないと思い出せなくなるような言葉の羅列を言われる。
・予算
「予定の金額」の意味。「販売予算」「原価予算」などと使う。「これくらい来月度売れるだろう」「原価は来月度こんな感じだろう」という目標というか予想の金額。個人的な感覚では「旅行の予算」とかいうと「旅行ではここまで使っていいやというギリギリの金額」「払えるお金」という意味で使っているので、「販売予算」「原価予算」と言われてもわからなかった。
・赤帽
「原料間に合わない!赤帽で寄せて」とか言われるけど赤帽って何やねんと思った。個人でやってるような運送便のことらしい。「赤帽で寄せて」は「個人でやっているような高い運送屋でもいいからとりあえず原料持って来させて」の意味。遠くの地域から利用すると金額が大変なことになる。軽々しく「赤帽で寄せて」といってはいけないらしい。でも新人を慌てさせるために「赤帽で寄せろ」と行ってくるので、そのまま相手に電話で伝えたりするとべらぼうな運賃がかかり怒られるかもしれない理不尽なゲームである。
・荷下ろし
荷物が届いた時にそれをトラックや運送便の車から下ろす行為。大きなものが届く場合や数が多い場合はフォークリフトで下ろす。
・ラップ巻いて
荷物が届いてそれをパレットの上に積んでフォークリフトという車で持ち上げて倉庫に運び入れるのだが、その時に積んだものが崩れないようにラップで巻く。無論巨大なラップであり貴殿の家庭のクレラップではありません。
・ウィング
トラックの側面がガパっと開いて、ものを横から取り出せる様式のトラックがある。その扉のことをウィングという。わからない人は下。この方式だと倉庫から少し離れたところに停車して荷物を下すので天候が荒れている日などは水とかかかってしまうのではないかと心配になる。
・〜〜って何の会社か知ってる?
「旭化成って何の会社か知ってる?」とかいきなり聞かれる。「化学品メーカーですか?」と答えると「サランラップのメーカーだわ!知らないの???大企業だよ!」と言われる。この後には「じゃあクレラップはどこでしょうか???」という問いが続き、答えはクレハであるが、それがどうした・・・という感情を表情に出してはいけない。ちょっと話が脱線した気がする。
・仕掛かり引いて
仕入れ先にある原材料の「在庫」を納品してもらってくれ、という意味。「仕掛かり」は「作っている途中のもの」という意味なのだから「仕掛かり引いて」は「作ってる途中のものを納入してもらう」という事で、作ってる途中のものは完成していないのだから納入してもらえないだろうと思うのだが、なぜか「仕掛かり引いて」は「在庫になっている完成した原材料を納入してもらって」という意味で、「仕掛かり引いて」と言われたら相手先にある完成した在庫の数を確認して、発注書を作成し、発注して納品してもらうのが正解である。言葉は統一して使って欲しいよね。
・コーヒーの準備をして
なぜかフィルターをセットして水をゆっくり上から注ぐタイプの機械でコーヒーをドリップしている。この機械の準備と掃除だけで毎日誰かが1時間ロスしている。コーヒーくらい買えばいいのにと思う。最初コーヒーをボトルで買わないということが理解できず、準備って何をすればいいんかと思っていた。
・OPP
OPPテープのことで、これはセロテープみたいな素材のテープである。ビニールっぽい。あまり細かいことにはこだわってなくて、紙テープとOPPのどちらかだということを考えてるみたい。
・値上げ率
値上げを行うときに、ダンボールならダンボール、テープならテープで、全てのメーカーに同じ率で値上げを認める方式をとることがある。私にしたらこれがよくわかんね。メーカーごとに製法も買っているものの種類も違うのに雑に全部同じ率で値上げというのはちょっとやられる身にとっては辛くないか。まあとにかくそんな風なので、それじゃ無理ならそれじゃ無理な理由を営業マンもちゃんと説明できるようにした方がよさそう。そのときに「値上げ率5パーセントまでは認める」などという。
・トン
KGとかGとかじゃないのかよー。と最初思った。ものをトン単位で使用することが多い。1000kgで1トンなのだが、その感覚がよくわからず、1000キロってどのくらいの重さ、とか思ってよくわからなかった。
・リードタイム
発注を受けてから完成して納品するまでにかかる時間のこと。「リードタイム短縮するのがお前の仕事だろ」などと言われる。これは「仕入先に連絡してもっと早く納めるようにしてもらえ」の意味。「わかりました」とか「物理的に無理」と答えるのが正解。口調は強いがみんな悪気があって言っているわけではなくて伝わりやすいように言っているか、もしくは虫の居所が悪いだけなので気にしない方がいい。
・「異物入るからダメ」
何かやろうとするとこれで「だめ」「やらないで」と言われることが多い。合言葉のようになっている。
・コンテナ
輸入荷物などをトラックにそのままコンテナごと積んで持ってくる。前述したように、そもそも10トンとか20トンとか言われてもわからないように、20フィートとか40フィートとか言われてもやはりわからない。20フィートコンテナと言われてもどんくらいの大きさやねん、何がどんくらい入るんやとわからないことばかり。
・検収
納入されたものを検査すること。変なのがあったら連絡したり返品とかする。簿記2級を勉強したことがあったらわかるかも。
・残業繰越
今月残業しすぎてしまったので、このぶん来月に繰り越しておいて、という意味。来月残業代が出る。意味がわからない。合法?
・検査入れて
工場内にはいろんな検査があるので「検査入れて」とだけ言われてもあんたの妻じゃないのでわからない。何を何の検査に入れるのですか!
・派遣さんくらいの覚悟しかないのか
「なめてんのか」の意味。実際には派遣さんの方が事業には貢献していると感じる職場も多い。失礼だと思う。雇用形態が違うだけで何なのか。
・現場を知らない
現場上がりじゃない間接部署の人が言われる言葉。別に現場で働いている人と同じ方法で現場を知る必要はないと思う。意外と現場の人には言われることがない言葉で、現場上がりの間接部署の人が、現場からではない間接部署の人に言っている。そんなにいうなら教えてあげて。
・乙仲
通関とかやってくれる海運業者?のこと
「乙仲挟んで」とかいう。「自分では通関とかよくできないから、詳しい会社に任せる」ということだと思う。
・安全在庫
欠品しないようにこれくらいは常に持っておくという在庫。安全在庫切ったら自動で発注してくれれば面倒がなくていいがそのシステムを作るのは私ですか?
・インボイス、パッキングリスト
輸入品の納品リストとして使われている通関とか保険とかに関係しているの書類。様々な意味があるのだが、基本的には商社が何とかしてくれるので、この書類を我々は納品書としか感じていない。
・労災
職場や通勤中に起きた事故のこと。なんでこんなに事故が多いねん。
ちなみに疲れたので今日はここまで。