いのちばっかりさ

その金字塔/ 絶対自立(物語です)

祖父について

 私には一人祖父が居る。もうお年寄りなのだが、私はかの人を恐れている。彼には何の欠点もない。私に何の悪いことをしたこともない。でも私は恐れていて、電話することが出来ない。そのことを私は心底悪いと思っている。私はいつも親切を徹底させることが出来ないし、それで寂しく思われたり、悲しまれたりすると思うと申し訳なくてたまらないのだ。だから今は、最初から余親切にしないようにしているのだ。

 

 埒外の人として放っておいてほしいという気持ちと、そんなにべったりしなくても本当に親しいと思える関係を望む気持ちの両方がある。私は世界中の小さな道を一人ですべて踏破したいという奇妙な望みに取り付かれている。

 

 

 

百 (新潮文庫)

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