いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

物悲しくない闇

どこにも行かなくて良い
良心な病院と飲食店と食料品店があり 
誰も私達を恐れないし
本は好きなのを飽きるまで読める
誰も広い視座など持たないし
マクロな景色にいちいち言葉を尽くしても良いでしょう
死が溢れ出しても
それをゆっくりと紙に書きつけることができる

 

 

どこにも移動する必要はないし
消して壊れることを気にしなくて良い相手と
日の差す木目のきれいな家で
目を瞑って怯えながら何もないという話をすることもなく
茶の味がわかる状態で
お茶を飲んで
芋をほってそれを焼いて食べると
何もない!という気持ちなど百年前になくなっていて

 

 

不安が夜の海の中で私を迷子にして
母と同じ髪を生きさせようとしても
陸まで泳ぎきり家に帰る
今はない家であってもそのことを想像できる
朝電車に乗るときに本を忘れても
そのことが私を強くさせる
音の襲いかかる中で
赤の旋律を歌い出す

青の夜闇の中には私達が寝る