いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

地下鉄の吸引

椅子の上に通路の上に

人が縦向けに位置し

何も見ないでいられるチューブの中

やり残したことや

不完全な過去を胸の細胞に溜めたまま

梅雨の憤りの外

ずっと風を感じている

それが海であろうと

湖であろうと

山で

谷であろうとも

もうでかけて行きたくはない

新しい世界ほしいな

新しい世界ほしいな

新しい世界きっと現れなければなるまい

君は貴族だから

何かを言えることが嬉しくてたまらないだろ

俺は何も言いやしない

ただ新しい世界をさそいこみ

新しい世界を作って

もうでかけて行きたくはないところへ

二度と出かけて行きはしない

 

歌を歌い無責任に人を断罪し

世界の不良に愚痴を言わないでください

切断された指や、記憶をつなぎ直したとき

その血流の悪い部分から

怒りが全世界に広がったのだ

ずっと風を感じている

何も言わない人は無気力じゃない

意識を失っているのではない

意識が低いのではない

もぎ取った桃の実をずっと見つめている