いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

霊前たる夜

夜は夏のように明るくなって

つぶやく言葉は完全に冷たく辞世の定型を気取った

朽ちていく自分を見ても

まだ百度目の食事のように夜露が食べられる

霊前たる夜の音

緑は血に入り

ラベルは剥がれてすべて捨てられてしまった

湿度を大切に守った部屋で

遠く隔てられた愛する人

ちっとも歩けない平原の雪の上を

二人して追いまくられるように生きた

ほんの一つのくだらない選択のために

失われた方よ

私に正しさを選ばせてほしい

もう一度苦しんだ平原の雪の上

生まれ変わってもまた

あそこで泣いている

流れ落ちる涙を食べながら

なにもない平原で

死ぬかのように生きて

言葉をかわすことがうれしくて

ただ生きていたあの平原の雪

暖かい朝よ

死ぬとしてもまた

あの歩けない雪の平原で探している