いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

春も花も

春も花もない

スーパーマーケットの

烏龍茶のところで

私達は抱きしめるようにして

日々の買い物を続ける

 

春も花もない

青のりの味噌汁を作って

家の中でそれを

美味しいと食べた

 

春も花もない

地下鉄で通勤をして

その春の訪れるのは

桜の花を見たとき

長い冬が終わり

黒い鳥は悠々と泳いで波紋を作る

春が来て私達は

とても幸福だから

記念日を祝おう

毎日は記念日だったが

そのことが桜によって

いま肌にぴったりと

祝福される

 

住まなくなれば違う人が住むだろう

人が踏まなければ草木で満ちるだろう

見なくても富士は冴えるだろう

迎えなくても春は来るだろう

生きなければ私達はいない

春も花もなく生き続けてきた

その春がここに来る

いつか迎えに来る春のように

練習をしているのだ