いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

蛍の問題

風呂樽にはいっていると

悲しくなる時があるのだ

持って入った紅茶も放り出して

ひたすら沈黙

私という問題はずっと短く終わってしまう

人より短い命に決まっているのだ

耳のあたりでふわふわの生き物がうごいている

髪を洗うのはやめ

問題について考えても

人より短いことが損

素晴らしい肉体に出会って

守り抜きたいのだ

一番いい問題と出会って

その横顔を愛でていたい

人がこたえられるわけもない

言葉で問いかけられるわけがない

風呂から出たら

コメディーを見ている夫がいるのだ

いつの間にか夜になり今日の食事も終わってしまった

まるで物語のように幸せだから

まるで今までの人生とは隔絶しているから

古いお菓子を食べている男を見て

私たちは一緒に笑っていた

蛍の問題と向き合いながらも

同じ川で生きていることがわかる