いのちばっかりさ

生きている記録。生業。放送大学。本を読む。入道雲100年分。

市井の人々 打ち明け話

 中卒なのに高卒と履歴書に書いて採用された人が居る。学歴詐称だ。聞いていてなんてストレスフルな話だろう。その人は、ばれるんじゃないかと最近めっぽう怯えている。会社から最終学歴を証明する卒業証書を提出するよう求められたのだ。怯えているという事実だけで、彼が救われればいいのにと願う。その人は就活で就職先が決まらず苦しんだらしい。

 

 私に打ち明けていたのではない。安い料理屋で相席になった、安っぽいワイシャツとスーツを着たサラリーマン二人の話を聞いていたのだ。聞いていてなんとつかれる話だろう。店を出て米を買った。こんなところに居る自分をのろった。聞いていてなんと明快に理解できる話であることか。その怯えの末端まで自分の身体に乗り移るようだ。

 

 

滑稽の研究 (講談社学術文庫)

滑稽の研究 (講談社学術文庫)