北杜夫の『黄いろい船』という本を、宿で読んでいた。その中に『こども』という話が入っている。
こどもの運動会へ朝食を食べずに腹をすかせたまま父親がやってきて、昼飯の時間ではないのに、弁当を食べ始めるシーンがある。ふつう運動会の弁当というのは昼ごはんタイムに家族揃って開けてたべるものである。
私の家族もかつて一緒に運動会の弁当を食べることがあった。その時よく食べていたのが「チーチク」である。それはちくわを輪切りにしたものにチーズを詰め、天ぷらにしたもので、私の好物だったが、そんな時にしか食べなかった。
シートを敷いて運動会の弁当をあちこちで各家族が広げ、太ももやら何やらにシートの下の石があたった。そんなことを思い出したらなんだか泣きたくなった。